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体育会系 安全第一

昔、僕が大学生だったころの私立の運動部というのは、
典型的な体育会系、たて社会で、4年生は神様、1年生はゴミという、世界で・・。

僕が大学4年のとき、この後輩は1年生部員として、テニス部に入ってきました。
1年生部員は、テニスのセンスのあるヤツ、ないヤツ、頭のいいヤツ、悪いヤツ、
体力のあるなし関係なく、みんな平等に、「ゴミ」のように扱われます
夏休み前の、雨の夕暮れでした。
グランドをみると、2年か3年生部員の虫のいどころが悪かったのか、
1年生が、そろって、雨の中、泥をはねあがらせ走っていました。
僕は、いいかげんにしとけよ、と3年生部員の一人にに言った時、
一人の1年生が、ふらふらと寄ってきて、僕の前で崩れるように倒れ、
そのはずみで、ぼくのユニホームは泥だらけになってしまいました。
一瞬、後輩たちの緊張した空気を背中で感じながら、
「もう、やすませてやれ。」というと、
どやどやと、2年生部員が叫びながら、飛び出していきました。
同級生に肩を支えられながら、よろよろと歩くこの1年生とすれ違ったとき、
僕は、思わず、「テニスは格闘技だから・・」と、声をかけていました。
彼は、なんのことかわからない、という顔で僕を見上げ、それでも反射的に
「ウスッ。」と答え、僕を見送ってくれました。  
「コートの中には、勝者と敗者しかいなんだよ。弱気になったら負けなんだ。」
誰に言うともなくつぶやき、雨の向こうをみると、
喧嘩の弱そうな背中が、消えていくのが見えました。

これが、この後輩を見た最後でした。
夏休みも終わる頃、監督から電話があって あの1年生が亡くなった。
後藤、おまえ、キャプテンだから、テニス部代表で弔問に行って来いといわれ
彼の死を知りました。
この後輩は建設会社の社長の一人息子で、夏休み、父親の建設工事現場で
アルバイトをしている時、鉄骨が頭にあたり、即死だったそうです。

読経が流れる中、若かったぼくは、祭壇の上の彼の笑顔を見たとき、
(グランド、走りきれんやつが、三途の川は泳ぎきれんだろうが・・・ばかやろ・・)と、
少年のように薄かった彼の肩を思いだし、涙がとまりませんでした。
あとで監督から、「ご両親の前で、あんな大泣きするやつがあるか。」と叱られ、
大事な息子さんをなくされたご両親の嘆きを、改めて知りました。
そして、図らずも、建築関係にかかわっている今、
現場の安全をうるさくいうのは、この後輩のせいかもしれません






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